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「宿便」とはどんなもの?

宿便を説明する胃腸科の医師

「宿便を取って、お腹スッキリ」

「宿便を出してダイエット」

このような宣伝文句のチラシを誰でも一度は目にしたことがあると思います。

 

あたかも「宿便」が健康の足を引っ張っているかのような広告ですね。

  • 宿便は腸壁にこびりついた老廃物
  • 食物のカスが煙突のススのようにこびりついたもの
  • 宿便はタール状のもので、体内毒素を発生させる
  • 宿便が増えると、消化吸収を妨げる

などと聞くと、なにやら、宿便は悪の根源のように思ってしまいますよね。

「便は宿便の内側を通り抜けるので、毎日便通のある人でも宿便は溜まる。」ともあります。

ホントに宿便は存在するの?

宿便はウソです。

宿便などというものは存在しません。

「消化管運動の異常や、頑固な便秘により便が排出されず腸内に長く滞留してしまうことはあっても、
ちまたで流布されている宿便情報はデタラメ。ウソです。」と胃腸科の専門医は断言しています。

「宿便」という言葉で脅かしておいて、高額な健康食品や怪しげな療法をセットにして宣伝していることが多いようですが、こうした商法は、宿便を取ると美容に効果があるとか、病気の予防になると信じ込ませる仕組みのようです。

宣伝文句を真に受けた人たちが、「私の宿便を取ってください。」と医療機関を受診するケースも多いようで、「誰のお腹にもバケツ一杯もの宿便があるそうなので、きれいにクリーニングしてください。」などと真顔で訴えるケースもあるそうです。

そんな大量に溜まった便をお腹から出せば、さぞスッキリするだろうし、ダイエットにもなるはずです。

本当に「宿便」というものが存在するなら取り除いてみたいもの、と思うのが心情だと思います。

でも、宿便はデタラメ。ウソだったのです。

宿便が存在しない理由

腸粘膜は、常に数日間で古い細胞が新しい細胞に置き替わるので、ヘドロのように便が腸粘膜にこびりつくということはあり得ないのです。

腸の壁がひだのようになっている構造のため、その谷間に便が入り込んで溜まってしまっているのが「宿便」であるという考え方のようですが、これはウソだということです。

そもそも、「宿便」という言葉は医学の専門用語ではありません。

口から肛門までの消化器官では、食べ物が、いつも消化、吸収、排泄を繰り返しています。

仮に、便を全部取り除いたとしても、またすぐに上部消化器官から、その原料が送られてくるのですから、「宿便」のようなものが存在していたとしても宿便取りに意味のないことは明白です。

通便異常はあっても宿便はウソ

便秘や下痢、残便感など、便通異常を抱えている人は少なくありません。

強いストレスを抱えている人が下痢や便秘をひんぱんに繰り返す「過敏性腸症候群」や大腸の運動が低下したり、排便時に”いきむ”力が弱まったりすることで生じる高齢者の便秘などが代表的な症状です。

さらには薬の副作用による便通異常もあります。

しかし、通便異常はあっても宿便は存在しません。

宿便などという、うさん臭い商法には、くれぐれも気をつけましょう。