摂食障害とは
食にまつわる話題と言えば、拒食症や過食症に陥る女性たちが増えています。
拒食症が、食べ物に嫌悪感を抱いて食欲を満たす食事を抑えたり、食欲そのものが喪失したりする「神経性食欲不振症」であるのに対し、過食症は、猛烈なスピードで大量の食べ物を発作的に摂る「神経性大食症」です。
一見、両者は対照的な症状を示していますが、根っこは同じなのです。
どちらにも共通して「ヤセ願望」があり、個々の病が潜んでいるのです。それまで拒食症だったものから一転して過食症に移る場合もあり、「摂食障害」と総称されています。
拒食症の人は、標準体重より15~20%も軽く、やせていく内科的な病気はもっていないのです。「そんな子、そこら中にいるじゃないか!」といった声が聞こえてきそうですが、その通りなのです。ただし、本人は「まだ太っている、もっとヤセなくちゃ!」と思いつめているのです。
がから、生理が止まっても、病気の認識はありません。むしろ以前より元気に振る舞い、痩せていく自分に満足し、もっと力が入ってしまい、はては死亡するケースもあります。
反対に、過食症の人は異常な大食をしては、嘔吐を繰り返します。こちらは自信を喪失し、情緒不安定。要らない食べ物まで手あたり次第に買い込んでしまったり、脅迫神経症状を呈して自殺願望が出たりします。自己満足している拒食症とは、この点が大きく異なります。
摂食障害には罹りやすいタイプがある
摂食障害の大半は、高校時代の女子に発症します。男女比は1対9ぐらいで、15歳がピーク。中学を卒業し、高校一年生になった年齢・・・思春期の真っ只中です。
摂食障害を発症する高校生は、不思議と生い立ちや家庭環境も似通っている傾向があります。優秀な親に厳しく育てられた、高偏差値のまじめな頑張り屋。特に教師の子供が目立つそうです。
もちろん兄弟姉妹でも、なる子ならない子がいるように、個性の差は大きいのでしょう。
上を目指せばきりがなく、特に頑張ることで自己が主張できる社会的背景があり、単なるダイエットが原因ではなく、背後に心の葛藤があると言われています。敗戦直後の日本や、助け合いと思いやりが息づく開発途上国では、ごく少ない症例のようです。
摂食障害は心の病気
摂食障害者に対して、周りの人はどうしたらいいのでしょうか?
当然ですが、なんの前触れもなく発症するわけではありません。心のサイン、SOSに早く気づいてあげることが大切なのです。
多くの患者は、アイデンティティー(自己の確立、主体性)の獲得が未熟で、体の二次成長に対する心の準備ができぬまま、大人になることを拒否しています。その原因として、とりわけ母親が過干渉だったり、反対に過度な放任だったりすることで、親への依存と反抗が共存している分離不安の場合が指摘されています。
摂食障害が満たされていない心の病気であると、親も社会も認識することが大切です。本来優秀な子だから、解決の糸口をつかめば立ち直れます。
治療は、まず療養しやすい環境づくりをし、カウンセリングなどの精神両方や行動療法を行います。患者本人だけでなく、両親も参加したほうが好ましいです。こころの病は薬で治すものではありませんので、薬物療法は補助的に使われるべきです。