腸内細菌はビタミンをも作り出す

タンパク質はセロトニンやドーパミンなどの幸せ物質の材料となることは既にお話ししました。ただし、タンパク質から幸せ物質の前駆体が合成されるまでには、ビタミンの作用が必要となります。

動物はもともとビタミンBやCを、食物から摂らなくても自分の体内でつくり出すことができていたのですが、人は進化の過程で、その能力を失くしてしまいました。果物や野菜などを豊富に食べられる環境にあったため、体内で合成する必要がなくなったと考えられています。

人間以外で、ビタミンBやCを体内で合成できないのはサルとモルモットだけです。

腸内環境を整えなければどんなサプリも効果なし

現代人はビタミン不足だといわれます。ビタミンは、健康と若さを保つために不可欠な栄養素であることが知られているので、たくさんの人がビタミン剤のサプリメントを常用しているのでしょう。

ビタミンBの不足で脚気(かっけ)が、ビタミンCの不足で壊血病(かいけつびょう)が起こりますが、多くのビタミンは脳内伝達物質の合成にも関わっているのです。

ただし、ビタミン剤やビタミンを含む食べ物を摂っていても、体がそれをすぐさま使えるわけではありません。食べ物からビタミンを合成してくれているのは腸内細菌です。だから、腸内細菌が少なかったり、腸内環境が乱れていたりすると、ビタミンの合成力は落ちてしまうことになります。

サプリメントでビタミン類を摂っても、腸内細菌を増やす努力をしていなければムダになってしまうのは、そのためなのです。

脳内伝達物質の合成にもかかわっている腸内細菌

腸内細菌によるビタミンB群の合成は、腸内細菌のエサである食物繊維の添加によって、大幅に増強されることがわかっています。ビタミンは食べ物から吸収するよりも、腸内細菌によるビタミン合成のほうが重要ということです。

多くのビタミンが、脳内伝達物質の合成にかかわっています。幸せ物質と呼ばれるセロトニンやドーパミンは、タンパク質の分解産物であるトリプトファンとフェニルアラニンによって腸内で合成されます。

タンパク質の分解にはビタミンCが必要です。トリプトファンやフェニルアラニンからセロトニンやドーパミンの前駆体を合成するには、葉酸やナイアシン、ビタミンB6などのビタミン類が不可欠です。これらのビタミン類をつくっているのが、腸内細菌です。

腸内細菌がいるからこそ、幸せ物資の前駆体が合成されるのです。そして、前駆体という小さな粒子を脳に送っているのも、腸内細菌です。腸内細菌が減ると精神状態が乱れるのは、幸せ物質がうまく分泌できなくなるからなのです。

どんなに高額なサプリメントを飲んだとしても、腸内細菌がバランスよく豊富に存在しなければ、ムダになりかねません。それだけに、腸内環境を常に整えておくことは重要なことなのです。